離婚をするか否かで争いがある場合、法律上の離婚原因があるか(判決で離婚が認められるだけの事情)が問題となります。
例えば、相手方が暴力を振るった、あるいは肉体関係を含む不倫を行っており、その証拠があるという場合、法律上の離婚原因が認められるのが通常かと思われます。これに対して、性格の不一致などの場合、大なり小なりどこの家庭にもあり得る話であるため、程度が大きくなければ判決で離婚が認められる可能性は低くなります。
「教科書通りに」回答すると、以上の通りとなります。現にこのような回答を他の事務所で受け、当事務所にどうにかならないかと相談に来られるケースも多いです。
①一見すると有力な離婚原因がなくても、丁寧に話をおうかがいし、主張、立証することで、離婚原因と認められたり、②手続や進め方の工夫を行うことで、協議、調停、訴訟上の和解により離婚が認められたケースを数多く経験しております。
夫婦関係がうまくいっていなかった事を証明することは、DVの怪我の写真、診断書や不倫の現場の写真、夫婦間の過去のメールなど客観的な資料が残っていない場合、なかなか難しいことがあります。また、同じ事柄であっても、双方に言いぶんがあり、その事柄の持つ意味が薄れてしまうこともあります。
この点、別居の有無・期間は、通常は夫婦双方に争いがない事が多く、また、仕事上の都合など特別の事情がない限り、夫婦関係がうまくいっていない事を示すため、裁判所も離婚原因を考える客観的なものさしとして、よく使われています。離婚原因が弱い場合でも、3年~5年程度の別居があれば、それだけで離婚原因になるものと考えられます。
また、実際問題として、離婚を争っている夫婦が同じ家で暮らし続けることには、相当な心理的負担がかかります。
更に、別居している場合、婚姻費用(生活費)を請求する事が可能となります。これにより、相手方が離婚を受容した場合、生活費は子の養育費だけで済むのに対し、離婚をしない事を選択する場合、配偶者の分も含めた生活費(婚姻費用)を支払わなければならなくなり、離婚しない事により、配偶者が戻ってくる保証もない中、前述の3年から5年の間、配偶者分も含めた生活費を支払い続けるよりも、支払額を子の養育費だけに抑えるためにも離婚を選択した方がよいのではないかという考え方も、実際問題として出てきます。
別居したタイミングで相手方に通知を出す事により、以降の直接の夫婦間のやり取りを無くすなど、離婚に向けたお客様の心理的な負担を少しでも軽くするための取り扱いを行っております。
暴力や不倫などの客観的な証拠がある場合、離婚を実現するための手続の選択にはそれほど悩まなくてよい事が多いかと思います。
これに対し、客観的な証拠が弱い、あるいは離婚原因自体がそれほど強くない場合には、何も考えずに離婚調停、訴訟と移行しても、判決で離婚自体が認められない可能性が高く、判決以前の段階で解決しておく事が肝要となります。
暴力や不倫などの客観的な証拠が弱い、あるいは離婚原因自体が強くない場合であっても、手続の選択や進め方を工夫することにより、離婚を数多く実現させております。