親権者の変更について
離婚の際に、子がいる場合、親権者の取り決めをしなければ
離婚を成立させることができない事は、ある程度広く知られているのではないかと
思われます。
離婚の際に一旦、親権者の取り決めを行った後、親権者ではない親が
離婚後に、親権者の変更を申し立てることがあります。
では、離婚の際に親権者をどちらにするかで争いがある場合に、
用いられる基準と、離婚時に一旦、親権者を取り決めた後に親権者を変更するか否かで争いがある場合に
用いられる基準では違いがあるのでしょうか。
まず、離婚時に、親権者の指定をする際の基準については、
父母双方の事情を相対的に比較し、どちらが子の福祉にかなうか、という形で判断されます。
具体的には、
①子の身の回りの世話(食事、掃除、洗濯、送り迎え、風呂その他)等を主に行ってきたのは
どちらか(=事実上の監護者)は誰か
②子の年齢が幼い場合、母性が優先されるのではないかという母性優先の原則
③監護者が頻繁に変わるのは望ましくないとの観点から、監護の継続性
④兄弟はできるだけ同じ親権者がみるのが望ましいという兄弟不分離の原則
⑤相手方と子の面会交流に対する寛容さ
⑥経済力、監護補助者の存在
などから判断され、①、②の観点が特に大きく結論を左右することが多いように思われます。
対して、離婚の際に一旦取り決めた親権者の変更を認めるか否かについては、
双方の事情の比較に加えて、離婚後の父母の一方による実際の監護の実績を踏まえて判断すると
されることが多いかと思われます。
違いがどこにあるかと言いますと、離婚時の親権者の指定の場面とは異なり、
一旦、親権者の取り決めを離婚時に行ったのであれば、離婚後に簡単に親権者を変更しては、
安定さを欠き、子の福祉に反するのではないかという視点が働く点にあるように思われます。
・父母の間で協議離婚が成立し、父を親権者と定めることとなった。
・母はガンの可能性があることが発覚していたことなどから、親権者を父とした。
・離婚成立後、再検査を行ったところ、悪性ではないことが発覚し、また、母が親に相談したところ、子の監護養育について
親の協力を得られる見込みがついた。
・そこで、親権者の変更を申し立てた。
という事案について、第1審は、
離婚以前の子の監護を主に行ってきたのは母であることや、再検査その他の離婚後の事情の変化により、
今後、監護できる見通しが立っているなどの事情を重視して、母への親権者の変更を認めました。
対して、第2審の東京高等裁判所は(平成30年5月29日決定)、
・離婚時の親権者の指定時は、母は真意に基づいて行った。
・離婚時の親権者の指定時に、母は自己の病状、収入等の自己を取り巻く環境について
正しく理解していた。
・親権者の指定時もガンの疑いにとどまるのであり、それが悪性でないと判明されることも
予想しえた。
・親や勤務先などに相談を行っていなかったが、相談等を行うことで何らかの援助を受けることが
できたものであり、これらの事情の変更は予想し得ないものではなかった。
・離婚後の父の監護養育は子の福祉に適っており、子は安定した生活を送っている。
などとして親権者の変更を認めた原審の決定を取消しました。
このような考え方に対しては、判断が厳格に過ぎ、結局、子の福祉に反するのではないかとの
批判も考えられるところです。
いずれにしろ、離婚時に一旦、取り決めた親権者について、離婚後に変更を求めることには、
相当のハードルが加わる可能性があることは間違いないため、安易に親権者の取り決めを行わないことが
重要と言えます。
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