離婚後の再婚、養子縁組による養育費支払義務の消滅時期の注意点
夫婦に子がいる場合、離婚時には親権をどちらにするかだけでなく、
養育費の取り決めも求めることが調停、訴訟では多いかと思われます。
この点、離婚時に養育費の合意ないし審判等により毎月の養育費を支払う義務が決まった後、
養育費の権利者が再婚し、再婚相手が子を養子縁組した場合、養子縁組した再婚相手に
第1次的な扶養義務が発生することから、原則として元の養育費の義務者は支払いが必要なくなることとなります。
では、養育費の支払義務は、離婚後の再婚相手の養子縁組によって、何の手続も行うことなく、
当然に消滅しているのでしょうか。
この点は、例えば、離婚後、養育費の権利者の再婚相手が、子を養子縁組をしたことを知らなかった場合などに
問題となりやすい事となります。
この点、養子縁組をしたと同時に、当然に養育費の支払義務が無くなると考えると、知らずに支払っていた金額の
返還を求めることになります。
しかし、実務の多くはそのように考えておらず、近時の東京高裁平成28年12月6日決定では、
「抗告人が相手方に対して支払うべき未成年者らの養育費を零にすべき始期について検討すると、
かかる点についての判断は、家事審判事件における裁判所の合理的な裁量に委ねられているところ、
累積した過去分を一度に請求される危険(養育費請求又は増額請求の場合)や既に支払われて費消した
過去分の返還を求められる危険(養育費減額請求の場合)と明確性の観点から、
原則として、養育費の請求、増額請求又は減額請求を行う者がその相手に対してその旨の意思を表明した時と
するのが相当である。」
とし、準備書面で養育費の支払義務がない旨を主張し、その後の養育費の支払を打ち切った時を当該時点として
認定しています。
従って、離婚後に養子縁組がなされただけでは足りず、養育費の支払義務者において、養育費減額調停などを
行い、養育費の支払を打ち切るなどの対応が必要となります。
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