子の引渡の間接強制、養育費不払の場合の口座の特定等に関する法制審議会答申
調停や裁判で離婚問題を解決することが昨今増えてきている上、離婚に関する
情報が得られやすくなったことから、
離婚を成立させる際に、養育費の取り決めをされる事は、従前よりも多くの方が行われているものと
思われます。
他方で、養育費は離婚当初は支払いがなされるものの、後々、払わなくなってくる、という事が問題と
されております。
この点、現在の制度では、養育費の未払がある場合、相手方の給料を1か月分だけでなく、
滞納が解消されるまでは、将来の給料も差押えの対象とする事ができるとの特則が設けられています。
しかし、これでは、勤務先が変わった場合に、給料の差押えが出来なくなってしまう、という問題が生じます。
また、給料の全額が差押えの対象となる訳ではないため、預金等の差押えも検討する必要がありますが、
どこの金融機関の何支店の預金を差し押さえるのか、という点は、養育費の支払を求める側が特定する必要があり、
ハードルが高いです。
そこで、今般、法務大臣より法制審議会に諮問がなされたところ、法制審議会は、
養育費の支払や賠償金の支払を確保するため、
・裁判所から税務署や自治体に対し、相手方の勤務先の開示を求めることができるようにする
・裁判所から金融機関に対して、相手方の預金の有無、残高の開示を求めることができるようにする
という形で、民事執行法を改正する旨の改正要綱案を作成し、答申する予定であると報じられています。
また、子の引渡については、現在、執行官による子の引渡(直接強制)がなされておりますが、
国際的な子の引渡に関する取り決めである「ハーグ条約」との整合性が問題とされており、
このため、間接強制(子を引き渡さなければ、一定の制裁金を支払う義務を負わせる)による事とし、
間接強制が確定した日から2週間が経過し、原則として同居の親と子が自宅に一緒にいる場合に限って、
直接強制が可能という形で改正要綱案が作成される方向で検討がなされていると報じられています。
いずれも離婚に伴う養育費や親権者の指定、変更、子の略奪に伴う子の引渡など重要な事柄に関する
改正が検討されている事となりますので、今後の動きが注目されます。
城陽法律事務所は、姫路に根ざし、離婚、男女問題の解決に力を尽くして参りましたが、このような法改正や
裁判例などの情報のアップデートにも力を注いでおります。