離婚調停に提出すべき証拠-57 退職・休職を踏まえた婚姻費用、養育費額の主張がなされる場合
離婚調停に提出すべき証拠を解説いたします。
今回は、離婚調停や訴訟に付随して、離婚までの間の生活費である婚姻費用や
離婚後の子の生活費である養育費が問題となっている場合で、
夫婦の一方が退職したことから、これを前提とした婚姻費用、養育費を主張する場合について考えます。
退職・休職を行った場合は、現実の収入は0円という事になります(失業手当や休職手当の支給を受ける場合は、
少なくとも当該金額は収入があることとなります。)。
しかし、退職等を行った事だけを示しても、裁判所は、直ちにこれを前提に婚姻費用、養育費を算定すべきとは
考えず、退職等に至った理由、経緯等を見ることとなります。
例えば、会社が倒産した、会社都合で雇用を打ち切られた等の場合は、退職に至った帰責性が
認められないため、従前の年収を元に収入をそのまま認定することは不適切と判断される場合が多いかと思われます。
ただし、この場合でも、失業手当の支給を受けている場合は、
少なくともこれを元に年収を考えることになるでしょうし、その他、求職活動の状況や、その方の資格の有無、職歴、年齢等も
踏まえて判断する事になるかと考えられます(例えば、医師であり、年齢も若いという事であれば、容易に就職して収入を得ることが
可能と考えられるため、勤務医の平均賃金を収入とする事などが考えられます。)。
また、退職、休職等をした理由が、病気、怪我のためという事であれば、働けず、収入が得られないという事に
なりますが(この場合でも、傷病手当等を得ている場合は、少なくともその範囲で収入を認定することになるかと考えられます。)、
主観的に働けないと主張するだけでは足りず、主治医の診断書(傷病名のみならず、稼働できないことまで意見の記載があるもの)が
必要となるかと考えられます。この場合、例えば、抑うつ状態などの場合は、稼働できないとの主治医の意見がある場合でも、
その信用性が争われることも考えられます(医師によっては、本人の愁訴通り意見を書いている場合も考えられるためです。)。
このため、主治医がどのような理由、根拠から判断をしているのかが重要となります。
また、稼働できない場合でも、将来にわたって稼働できない見込みなのか、どの程度の期間なのかも問題となるでしょう。
以上より、退職・休職を踏まえるべきとの主張が婚姻費用、養育費についてなされる場合、
単に退職・休職があった事の主張、立証がなされるだけでは足りず、
いつ、どのような理由で退職に至ったのかが分かる資料(解雇通知書、勤務先の破産の新聞記事、医師の診断書等)や、
退職後に得ている、または得ようとしている収入があるのであればその資料(失業手当の支給決定等)、
それまでの職歴、資格、求職活動の内容及び状況等をまとめた陳述書、
逆に、退職・休職等を踏まえるべきではない、と主張する側からは、働こうと思えば働けることが分かる資料
(相手方の職歴、資格やこれに沿った求人情報の広告等、病気等を理由としている場合は、これと矛盾する行動を示す資料(SNSなどの自身の投稿等))
などを証拠として提出することが考えられます。
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