離婚の際の別居に際し、注意すべき点⑩ 年金分割に影響するか?
離婚の調停や協議を行うに際し、別居を行った上で手続を
行う方は多いかと思われます。
ここでは引き続き、離婚の際の別居に当たって注意すべき点を解説いたします。
離婚を行うに当たって、財産分与や年金分割を合わせて求められる方は多いかと思います。
この点、離婚時の財産分与を行うに当たり、対象となる財産の価値は、離婚に向けた別居(単なる単身赴任等を除きます。)
を開始した時点となるのが原則となる事は、ご存知の方も多いかと思われます。
それでは、年金分割についてはどうでしょうか。離婚時の財産分与の基準時が、離婚に向けた別居を開始した時点と
される理由は、同居中は夫婦双方の収支が混同し、家計が一体となっており、経済的協力関係にあったと言える事に
よります(単身赴任の場合も、給料自体を渡していたり、生活費として相当額の支払をされているなど、経済的な協力関係があるのが
通常です。)。
この理由からすれば、離婚に向けた別居を開始した時点で、経済的な協力関係が絶たれている以上、別居後に働いて
年金を国に納めたとしても、配偶者の協力を得て働いて納めた訳ではないから、別居開始後に納めた年金については、年金分割の対象期間から
除外すべきではないか、とも考えられます。
しかし、年金分割制度を定める「厚生年金保険法」は、そもそも、
「対象期間(婚姻期間その他厚生労働省令で定める期間をいう。)」に係る被保険者期間の標準報酬の改定の請求を
行うことが出来る、としており、対象期間は「婚姻期間」であって、「婚姻から別居開始まで」とは定めていません。
年金分割の調停、審判等で定めることができる対象は、「請求すべき按分割合」(婚姻期間中に夫婦が納めた年金額を合算したものを
何対何で割って割り付けるか)だけとなっておいます。
それでは、請求すべき按分割合において、別居後の部分を調整すればよいのではないか、と理論的に考えられるのかも
しれませんが、実務上、按分割合が0.5以外の結論になった裁判例はこれまで見当たりません。
また、これを認めると、実際上の問題として、別居したのがいつなのか、年金事務所では分からない事情(そもそも別居の時期について当事者間で争いが
あることも多いです。)にもとづき、いついつ別居したのだとすれば、以降払われた年金額はいくらであり、それまでの期間払われた金額はいくらである、
などと煩雑な計算をしなければならない事となるという問題もあります。
以上から、別居を行ったとしても、財産分与と異なり、年金分割の結論自体には影響を及ぼさないと
言えます。
離婚を弁護士に相談、依頼をお考えの方は、姫路の城陽法律事務所まで遠慮なくご相談ください。
豊富な解決実績にもとづき、お客様と一緒によりよい解決方法をかんがえます。