離婚の際の別居を行うに際し、注意すべき点④- 財産分与の基準時=別居開始時
離婚の協議や調停等を行う前に別居を行った上で進められる方も
多いかと思われます。
ここでは、引き続き、離婚の際の別居を行うに当たって注意すべき点を
解説いたします。
離婚の際の別居には、法的には、①以降は夫婦別の生計で行い、一方が他方に、
離婚成立までの別居中の生活費である婚姻費用を支払うのみの関係とする、という意味を持ちます。
このように、経済的協力関係が絶たれた事を意味するものの、婚姻費用の調停、審判の対象は原則として
調停申し立てや内容証明等で婚姻費用の請求を行う意思を明示した時以降のものを対象とすると実務が
考えていることは、既に述べた通りです。
また、夫婦間の経済的協力関係が絶たれたことを意味することの裏返しとして、
②財産分与の対象となる財産は、別居開始時点に存在したものが対象という事が挙げられ、この点、注意が必要です。
つまり、別居を行わず、かつ、同居した状態で婚姻費用分担調停等も行っていない場合に、時々、「家庭内別居」などの
主張をされる方がおられますが、物理的に離婚に向けた別居を行うか、同居した状態であっても婚姻費用分担調停を行うなど、
経済的な協力関係にない事が明確でない場合、財産分与の対象財産にその後の収入等の蓄え等も含まれていってしまう、という
問題が発生します。
財産分与の基準時=離婚に向けた別居開始時(ないし、同居事案でも婚姻費用分担調停等を申し立てた時点)と考えられることから、
いずれかを行っていなければ、月々の給与や賞与が今後入るなどして増えると、その分も財産分与の対象価値に入り込むということです。
なお、それでは、別居直前にまとまった金銭を引き出しておき、その後、別居すると、少なくなった金額が財産分与の対象となるのではないか、
と時々お考えになる方がおられますが、別居直前の引き出しについては、その人が財産分与を先取りしたと見られることになり、意味を持ちません。
また、夫婦の不動産の火災保険金が入る、という場合も、もともと別居前から債権として存在していた場合には、保険金の入金が別居後であっても、
やはり財産分与の対象価値に含まれます。
なお、株式や投資信託、不動産のように、相場の変動があるものについては、株式の種類、数量等については別居開始時のもので
考えますが、その評価については、財産分与を現に行う時点(具体的には、調停を成立させる時や審判の審理終結時)の価格により
考えることになります。(A社の株式が別居開始時に100株あり、別居開始時には1株100円であったものが、調停成立時には1株200円になっていた、
という場合、100株×200円=2万円を財産分与の対象価値として考えることになります。)
このように、「別居」という概念は法的にさまざまな場面で意味を持つ重要なものであることが分かります。
このため、離婚調停、訴訟等ではこれに対応した形で必要な主張、立証を行うことが重要です。
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