不貞行為の慰謝料の金額
不貞行為を理由とした慰謝料請求を行う場合,
その理由付けとして一般的に主張されることが見受けられるのは,
・婚姻期間の長さ
・不貞行為当時の夫婦の円満の程度
・不貞行為の期間の長さ
・不貞行為の態様の悪質さ
・不貞行為の結果,生じた婚姻共同生活の破壊の程度
・未成熟子の存在
・資産・収入
といった事が多いです。
では,これらの事情は,実際に判決において不貞行為の慰謝料の金額を
決める上で影響するのでしょうか。
この点,「家庭の裁判と法」15号40頁以下において,平成27年10月から
平成28年9月までの間,東京地方裁判所で言い渡された,不貞行為の慰謝料に
関する裁判例の分析結果が報告されています。
不貞行為の相手方のみに対する慰謝料請求について,
婚姻期間については,婚姻期間が20年以上の場合の平均額は約158万円,
3年以下の事案の平均額は約137万円とされています。
20年以上の場合の金額が少し安いようにも思われますが,ケースによろうかと
思われます。婚姻期間が長いほど,慰謝料額は大きくなる傾向が見られると解説されています。
実務感覚でも,婚姻期間が20年以上とそれ未満の場合では,金額が異なるように思われます。
不貞行為時の夫婦の円満の程度については,
危機に瀕している,破綻しかかっているなどの場合,平均額は90万円であるのに対し,
円満あるいは判決で特に夫婦関係に言及がない場合,平均額は160万円とされています。
不貞行為時の夫婦の円満の程度は,金額に大きく影響を与える要素の1つと言えるかと思われ,
分析でも,裁判例にかなり具体的に反映されているということができる,とされています。
不貞行為の期間については,1年以下,3年~5年の場合,いずれも140万円台,
10年以上の場合,188万円が平均額とされています。
不貞行為の期間が10年以上となると,金額に影響を与える可能性がありえるかと
思われます(ただ,これは,婚姻期間の長さにも影響する部分があるものと個人的には
考えています。)。
不貞行為の態様の悪質さについては,
不貞の相手方が子を出産した場合に,必ずしも増額の理由となっているわけでは
なさそうであるとの分析がなされています。
また,一度,不貞関係をやめると約束したにもかかわらず,約束を破ったケースについても,
同様に,一律に増額事由とまでは言い切れないとの分析がなされています。
不貞行為の結果,生じた婚姻共同生活の破壊の程度については,
離婚訴訟中などで破綻が明らかなケースの平均額は171万円であるのに対し,
相当円満な状態に戻っているケースの平均額は97万円とされており,
破壊の程度に即した判断を行っているということができるとの分析がなされています。
未成熟子の存在については,いる場合,いない場合いずれも平均額が150万円台との
報告がなされています。判決文の中では考慮要素として未成熟子がいることを挙げている
例が一定数見られるものの,実際のところでは,大きなファクターとしては考慮されていないのでは
ないかとの分析がなされており,個人的にも実務の感覚に合致していると考えております。
不貞行為の慰謝料額は,個人的には婚姻期間の長さ及び不貞行為時の破綻の程度,不貞行為による夫婦関係の破壊の程度で
おおよそが決まり,不貞行為の悪質さや不貞行為の長さなどによって,修正が加わるというのが私の個人的な実務感覚です。
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