未成熟の子がいる場合の有責配偶者からの離婚請求
不貞行為等を行った、いわゆる「有責配偶者からの離婚請求」については、
最高裁判例により、①夫婦の別居が、年齢、同居期間と対比して相当長期間に及び、
②未成熟の子がおらず、③相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて
苛酷な状態におかれる等、離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するという特段の事情が
なければ認められるとされています。
上記①~③はそれぞれ独立した要件と考えられていますが、実際には全体のバランスで離婚の当否が
判断されています。
大阪高裁平成5年3月10日判決では、
夫婦が56歳、54歳、同居期間が15年、子4人のうち3人が成人に達し、
残る1人も未成年であるものの間もなく高校を卒業する年齢に達していたという事案において、
・婚姻費用分担審判の結果とは言え、月15万円の生活費を支払い続け、
離婚に伴う給付として、具体的で相応の誠意ある提案がなされており、
離婚によって精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれるとまでは言い難く、
・他方で離婚に応じないとする配偶者も、執拗に威迫的な電話をかけるなど婚姻関係の回復を
真摯に願っているとは受け取れない面があり、別居期間の経過に伴い、諸事情が変化し、
社会的な意味・評価も変化した
として、著しく社会正義に反するとは言えないとして、有責配偶者からの離婚を認めました。
その上告審である最高裁平成6年2月8日判決も、
「有責配偶者からされた離婚請求で、その間に未成熟の子がいる場合でも、ただその一事をもって
右請求を排斥すべきものではなく、・・・総合的に考慮して、・・・信義誠実の原則に反するとはいえないときには、
右請求を認容することができると解するのが相当である。」
「・・・まもなく高校を卒業する年齢に達しており、毎月15万円の送金をしてきた実績に照らして
養育に無関心であったものではなく、離婚に伴う経済的給付もその実現を期待できるものと認められることから、
未成熟子の存在が本件請求の妨げになるということもできない」
として、結論を維持しています。
従って、②未成熟の子がいる場合でも、①、③など他の要件と総合的に判断して、
有責配偶者からの離婚請求が認められる場合があります。
判例が考慮している通り、生活費や離婚の際の給付金額の提示等について、
十分であったかという点は重視されます。
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