離婚調停に提出すべき証拠-58 配偶者が他方に対して刑事告訴を行った場合
離婚調停、訴訟等に提出すべき証拠を解説いたします。
今回は、配偶者が刑事告訴を行った場合について考えます。
ご承知の通り、日本の裁判実務は、離婚について双方合意に至らないケースにおいては、
法律上の離婚原因の有無が問題となり、その多くは、「婚姻を継続し難い重大な事由」があるか否かが
問題となります。
離婚調停や離婚訴訟等の間近い時期や、離婚調停等が係属している間に、
離婚原因が無い等として離婚を拒絶している配偶者が、他方に対し、刑事告訴を行った場合については、
どのように考えられるでしょうか。
この点、東京高裁平成4年11月26日判決では、
夫婦の一方が、相手方に無断で離婚届を提出したことから、他方が、有印私文書偽造・同行使等の罪で
刑事告訴を行った事案について、
無断で離婚届を提出した件について、離婚が無効となった上、慰謝料の支払まで行い、民事上の責任を
果たしたにもかかわらず、刑事告訴まで行ったという点を捉えて、婚姻関係が破綻していると認めて、
離婚請求を認めています。
当該離婚訴訟では、離婚請求の棄却を求める側において、
・刑事告訴を行ったのは、相手方と将来について
話し合いが出来たかったことから、その機会を持つためにやむを得ず行ったもの
・くも膜下出血後のリハビリ中であるにもかかわらず、離婚届を偽造して提出したり、
別居して居場所を知らせないなどしており、破綻の原因は相手方にある。
・夫婦の協力扶助義務を放棄して、闘病中の者を捨て、別居により婚姻関係が破綻している旨、
主張することは公正、正義に反し許されない
等と主張を行ったものの、裁判所は、「婚姻関係が破綻するに至った原因は妻(離婚届を無断で提出した側)のみに
あるという事はできず、両者にあると認めるのが相当」と判断しています。
このように、夫婦間で刑事告訴まで至った事案については、ケースにより、婚姻関係破綻との評価に至る場合が
考えられるため、離婚調停や訴訟においては、いつ、どのような内容で刑事告訴がなされたのかや、それまでの経緯、
民事上の責任を別途果たしているか(損害賠償等の支払の有無)などを、陳述書や、示談書、振込書・領収書(賠償金の支払)等で
主張、立証することが考えられます。
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