離婚調停に提出すべき証拠-51 婚姻費用・養育費 給与所得者の職業費
離婚調停、訴訟等に提出すべき証拠を解説いたします。
今回は、離婚までの間の別居中の生活費である婚姻費用や養育費を離婚調停等で合わせて請求する場合で、
夫婦の一方が給与所得者であり、交通費や交際費など(職業費と言います。)がかかっている場合について考えます。
婚姻費用や養育費を定めるに当たっては、夫婦双方の収入や子の数、年齢を元に、裁判所の
「算定表」に基づき考えるのが基本となることはご存知の方も多いかと思われます。
この点、収入が事業収入の場合は、接待交際費等はそもそも経費として収入から差し引いて
確定申告がなされており、経費を差し引いた後の金額である所得を見ることになるため、問題は生じにくいかと
思われます(事業に無関係の個人的な消費を経費に入れている等の場合は問題となり得ます。)。
対して、給与所得者の場合、定型的に源泉徴収がなされる他は、例えば、営業職であり、会社に接待交際費を自分で賄わされている、
会社から携帯電話は貸与されておらず、個人の携帯電話を使い、自身で携帯利用料を負担しているなどの
場合や、通勤の定期代がかかっている場合などにどうするのか疑問を持たれる方も多いのではないでしょうか。
この点は、まず、裁判所の「算定表」がどのように作成されたものかを把握する必要があります。
「算定表」は、簡易迅速に生活費の算定が出来るよう、作成されたものであり、様々な統計を利用して作成されています。
その中には、「職業費」があり、被服費、交通・通信費、書籍費、諸雑費、交際費などが含まれます。
統計上、給与所得者の総収入に占める職業費の割合は、概ね、総収入の19~20%程度であることから、これを織り込んで
算定表は作成されています。
従って、夫婦の一方が給与所得者であり、経費として定期代や、携帯利用料、接待交際費を負担している場合でも、
総収入の18~13%(高所得者の方が割合は低くなります。)は、既に算定表が事情として織り込んでいることとなるため(司法研修所編「養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究」P22~27)、負担が当該金額の範囲内であれば、調整はなされないこととなります(定期代等が会社から支給されている場合も、これを控除せずに、額面で収入を見ることとなります。)。
他方で、(会社から支給される定期代等を考えても)総収入の18~13%を超えるという場合は、算定表では考慮されていない
特別の経費がかかっていることとなるため、場合により、収入から差し引くことも考えられるものと考えます。(少々の差であれば、誤差の範囲ということで、
調整はされない可能性も考えられます。)。
そこで、調整を求める立場の場合は、月々、どのような職業費がいくらかかっているのかを、領収証等で証明するとともに、
給与明細も証拠で提出し、会社から補助がなされている金額(通勤手当等)を考えても、算定表で織り込み済みである総収入の19~20%を超えている
旨、主張立証し、超過分を収入から差し引くべき旨、主張することが考えられます(逆に、調整すべきではないという立場の場合、職業費を全て足しても、
総収入の18~13%の範囲にとどまっている旨、主張することが考えられます。)。
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