離婚調停に提出すべき証拠-㊾婚姻費用・養育費 生活保護収入
離婚調停や訴訟に提出すべき証拠を解説いたします。 今回は、離婚に付随して、離婚までの間の別居中の生活費である婚姻費用や、離婚後の子の生活費である 養育費を請求する場合で、婚姻費用や養育費の権利者の収入が、生活保護である場合について考えます。 婚姻費用や養育費を考えるに際しては、夫婦双方の収入がいくらであるのかが重要となります。 生活保護費についても、収入である事には違いなく、これによって生活をしていることからすれば、 生活保護費も収入に含めて婚姻費用や養育費を考えるべきとも思えます。 しかし、実務では、生活保護費を婚姻費用や養育費を算定する際の収入には含めて考えられていません。 なぜでしょうか。 近時の東京高等裁判所令和4年2月4日決定は、「生活保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、 能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われ、民法に 定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべて生活保護法に優先して行われるものとされている (生活保護法4条1項、2項)のであるから、相手方及び子らの生活を維持するための費用は、 まずは相手方及び子らに対して民法上の扶養義務を負う抗告人による婚姻費用の分担によって賄われるべきであり、 抗告人が負担すべき婚姻費用分担額を算定するに当たっては、愛意手形が受給している生活保護費を相手方の収入と 評価することはできないというべきである。」と述べています。 つまり、生活保護法自体が、「扶養義務者の扶養」が生活保護よりも優先してなされるべき旨、定めているため、 生活保護費を受給していることを前提に、婚姻費用額を決定するのではなく、扶養義務者が本来、いくらの婚姻費用を支払うべきかを 考えるべきである、という考え方を採っています。 これに似た論点として、婚姻費用や養育費を定めるに際し、義務者側から、「親元で生活したり、親から生活費を援助してもらっているのだから、 算定表より少ない額にすべきである」などと主張されるケースが考えられます。 しかし、これについても、配偶者や子の生活を維持すべき者は、他方配偶者であり、扶養義務として劣後する配偶者の親による援助等を 婚姻費用や養育費算定に当たって考慮すると、配偶者の親がまずは扶養すべきという意味になってしまう事から、実務では、このような 主張は採用されていません。 従って、自身の収入が生活保護費である場合は、これが分かる資料(生活保護費の受給決定書、所得証明書等)を証拠として 提出し、婚姻費用や養育費の算定に当たって考慮すべき収入には当たらない旨、主張することが考えられます。 離婚を弁護士に相談、依頼をお考えの方は、姫路の城陽法律事務所まで遠慮なくご相談ください。 豊富な解決実績に基づき、お客様と一緒によりよい解決方法を考えます。