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2022年09月16日

離婚調停に提出すべき証拠-㊵婚姻費用・住宅ローンを相手方が払っている自宅に住んでいる場合で、自己の収入が少ない場合

離婚調停に提出すべき証拠を解説いたします。

今回は、離婚調停に付随して、離婚成立までの間の生活費である婚姻費用分担調停を申し立てた場合で、

相手方が住宅ローンを支払う自宅に、当方が居住している場合で、自身の収入が少ない場合について解説いたします。

 

婚姻費用の義務者が住宅ローンの支払を行っている自宅に、婚姻費用の権利者が居住している場合でも、

住宅ローンの金額そのものを婚姻費用月額から差し引くことはできず、婚姻費用の権利者の年収に対応した

統計上の標準的な住居関係費(例えば年収200万円未満の場合、2万2000円程度)を差し引くことが

できるのみ、と考えるのが一般的です。

 

もっとも、上記のように、権利者が住宅ローンの支払を行っているいかなる場合でも、婚姻費用月額から、

統計上の住居関係費を差し引く事ができる訳ではないと考えられます。

その例の1つが、婚姻費用の義務者が不貞行為を行った等、帰責性が認められる場合です。この点はご存知の方も

多いかと思われます。

 

もう1つの例は、婚姻費用の権利者の収入が無収入であるか、非常に少ない場合です。

「権利者には、義務者と異なって、基礎収入算定において留保されるような住居関係費が全くないか

非常に少なくなる。このような場合、権利者が住居を新たに確保するには、その費用を生活費部分から捻出

せざるを得ず、義務者との間で不公平となる。そこで、義務者の収入や資産を考慮して、公平の見地から、

義務者に権利者の住居確保の費用を分担させる、すなわち義務者が住宅ローンを支払うことを考慮しないことが

妥当と言える。」と解説されており(松本哲泓著「婚姻費用・養育費の算定-裁判官の視点にみる算定の実務」116頁)、

同様の判断を行った審判例として、大阪高裁決定平成29年5月26日が存在します。

 

なお、当該審判例では、婚姻費用の算定に当たり、権利者には年60万円程度の収入を得る稼働能力があると認定したものの、

「抗告人には60万円の収入を得ることができる稼働能力があることを前提に婚姻費用分担金の額を算定しているが、

実際に60万円の収入があるわけではないから、抗告人が婚姻費用の原資となる基礎収入の算出に当たって控除されいる

標準的な住居関係費の支払を免れ、これを留保していることにはならない。」と判示し、収入を推定計算した場合でも、

収入が現に存在しない場合には、住居関係費の控除を行わないのが相当であるとの考え方を示しています。

 

以上から、権利者の収入が無収入あるいはほとんどない事を示すため、所得証明書の提出を行い、

上記のような主張を行うことが考えられます。

 

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