離婚の際の別居を行うに際し、注意すべき点⑧ 引越費用等をどうするか
離婚の協議や調停を行うに際し、別居を進めた上で、手続をされる方は
多いかと思われます。
ここでも、引き続き、離婚の際の別居を行うに際し、注意すべき点を
解説いたします。
離婚協議や調停等の手続に当たって、別居を行う場合に、引越費用や新しいアパートの敷金等は
どうするとよいのでしょうか。ご自身に収入があり、そこから捻出が容易である、という方に関しては、
特に悩まれることはないのかもしれませんが、例えば、専業主婦の方で、ご自身に収入はなく、夫名義の預金の
管理を任されている方の場合、どうすればよいのでしょうか。
この点、夫名義の預金であるので、相手方の了解を得ずに、自身の引越費用等に充てた場合、
相手方から、「不当利得」に当たり、返還すべきである旨、主張されることがありますが、
この例のように、生活用に夫の給与の入る預金の管理を任されている等の場合、そもそも夫婦の実質的な共有財産ではないか、
という問題もあり、不当利得に当たらない、と判断される事が多いかと思われます。
それでは、引越費用等に充てられた相手方は、損をするだけではないか、と思われる方がおられるかもしれませんが、
この点は、後の離婚時の財産分与の先取りと見て、財産分与の対象額としては、別居に際し引っ越し代等を支払う前の金額を
対象と考え、これを、引っ越し代等分、1人で先に取得した計算を行うことになるかと思われます。
例えば、夫婦の財産が100万円の預金しかなく、別居前に引っ越し代として20万円支払っていた場合、
財産分与の対象価値は、通常は、別居開始時点で存在した残高で考えるのですが、直前の引き出し等の場合、これも含めて考え、
80万円ではなく、100万円を対象価値と見ることになります。50万円ずつを夫婦で分け合うこととなりますが、既に20万円先取り
しているため、引越を行った側がもらえる残額は30万円と考えることになります。
なお、引越費用を、離婚までの間の別居中の生活費である婚姻費用として請求できるか
(具体的には、裁判所の用いる「婚姻費用の算定表」の基本額では考慮されていない特別の経費と見て、
基本額に上乗せを求めることができるか)、
については、一般的には、引越費用を配偶者が負担する理由はない、と見る事が多いかと思われますが、
近時の裁判例では、配偶者に無理矢理追い出されたケース等では、負担を認めるものも出てきています。
離婚を弁護士に相談、依頼をお考えの方は、姫路の城陽法律事務所まで遠慮なくご相談ください。
豊富な解決実績にもとづき、お客様と一緒によりよい解決方法をかんがえます。